慢性疲労性症候群南大阪鍼灸所

 category : その他の疾患 

慢性疲労性症候群(CFS)とは

慢性疲労性症候群の患者さんは非常に多岐にわたる不定愁訴を訴えます。通常の血液検査では異常が見つからず、精神科を紹介されたりします。しかし、疲労を説明できるような精神疾患は見つかりません。患者さんの多くは、病気の証明もなく、会社や学校を休み「あの人はサボっているのではないのか」と陰口をたたかれることもあります。家族にも理解されないこともあります。

南大阪鍼灸所にも現在数名の慢性疲労性症候群の患者さんが来院されています。継続治療することで少しづつですが、症状は改善してきています。

慢性疲労性症候群の症状

現代社会に暮らす私たちは一生懸命に働いたり、家事や育児に追われたり、日常的に疲れを感じています。「慢性疲労性症候群(CFS)」と聞くと「もしや私も・・・」と思う人もいるかもしれません。

慢性疲労性症候群の疲労は通常の疲労とは異なり、体を動かせないほど強く、休養をとっても軽減されず日常生活が送れなくなります。患者さんは強い疲労のため日常生活でできることが健康なときの半分以下に減ってしまい、患者さんによっては「椅子に座るのもつらい」「箸やペンさえ持てない」「トイレにいけなくなる」ことさえあります。

慢性疲労性症候群では「長引く疲労感」「頭痛」「のどの痛み」「筋肉痛」「関節痛」「睡眠障害」「思考力の低下」などの症状があり、診察時には「微熱」「首のリンパ節の腫れ」「筋力低下」なども認めれれています。例えば、それまで健康だった人が、肝臓、腎臓の病気や甲状腺の病気、更年期障害、がんなどの病気がないのに強い疲労状態に陥り上記のようなさまざまな症状を伴って6ヶ月以上続くような場合に慢性疲労性症候群とされます。

このように慢性疲労性症候群は一般的な“慢性疲労”とは同一に考えることはできない病気なのです。

慢性疲労性症候群は疲労や思考力、集中力の低下など同じような症状があることから「うつ病」と間違われる場合もあります。しかし一般にうつ病の症状は朝重く、午後になると軽減する傾向があるのに対して、慢性疲労性症候群の症状は朝には比較的に軽く、午後になると徐々に強まるという違いがあります。ほかに、うつ病では「コルチゾール」というホルモンの血液中の濃度が健康の人よりやや高い傾向があるのに対して、慢性疲労性症候群では低い傾向があるという違いもあります。

病気の起こり方

健康を守るために「神経系」「内分泌系(ホルモン)」「免疫系」の3つのネットワークが備わっています。これらは互いに作用しバランスを保ちながら働いています。慢性疲労性症候群の患者さんではさまざまなストレスをきっかけとしてこれらのバランスが崩れます。例えば、精神的なストレスがかかると自律神経のバランスが崩れることがあります。慢性疲労性症候群ではそれに連動して免疫系、内分泌系のバランスが崩れます。その影響は脳におよび脳の血流量の部分的な低下などの異常が生じていることが分かってきました。そのために脳の働きにも異常が生じ、強い疲労感やさまざまな症状が引き起こされていることが分かってきたのです。

さまざまなストレスがきっかけとなる

次のようなストレスがいくつも同時に加わって神経系に異常が生じる

  • ・精神的ストレス―人間関係の軋轢など
  • ・身体的ストレス―過労、トレーニングのしすぎなど
  • ・科学的ストレス―建材などから放出される化学物質など
  • ・物理的ストレス―紫外線、温熱、騒音など
  • ・生物学的ストレス―ウイルス、細菌など

ウイルスが再活性化する

人間の体内にはヘルペスウイルスなど過去に感染したさまざまなウイルスが潜伏しています。ストレスで神経系の働きに異常が生じると免疫の働きが低下します。その結果潜伏していたウイルスが活動を再開します。これを「ウイルスの再活性化」といいます。

免疫物質がつくられる

再活性化したウイルスを抑え込もうとして、体内ではインターフェロンやTGF-βなどの各種の免疫物質が盛んにつくられます。過剰な免疫物質は脳の働きに影響を及ぼし強い疲労を生じさせたり、血中に長くとどまって疲労感を長引かせます。

▼インターフェロンが微熱、筋肉痛、関節痛、気分の落ち込みなどを引き起こします。

▼TGF-βが血中に長くとどまって疲労感を長引かせます。また幸福感や情緒に関係しているホルモン(DHEA-S)を減少させ疲労の回復などを阻害します。

内分泌系にも異常が生じる

免疫物質が過剰につくられると内分泌系にも異常が生じ疲労の回復が阻害されたり、脳の働きに異常が生じます。

▼DHEA-Sの減少はアセチルアルニチンという物質の減少も招きます。アセチルアルニチンは脳では神経伝達物質の合成に使われるので減少すると主に脳の慢性疲労に関与する部分の機能異常が起こります。

また自分の組織を攻撃する種々の自己抗体がつくられて、それが脳に運ばれ、脳の疲労を感じる機能の異常を引き起こしている可能性も指摘されています。

慢性疲労性症候群の患者さんの脳の血流量を健康な人と比べると自律神経、意欲、記憶、体温調整や心拍と関係する部分など、いろいろな部分で血流量が低下しており、脳の機能低下が確認されています。例えば、自律神経の中枢の働きが低下すると「立ちくらみ」「ふらつき」「発汗異常」などの自律神経失調症状が現れます。

▼痛覚の異常―脳の痛みを感じる部分では、神経伝達物質の量の異常が生じており痛覚が過敏になっていることが分かっています。

▼自律神経の異常―自律神経には交感神経と副交感神経があり、心身が緊張すると交感神経が優位になります。慢性疲労性症候群の患者さんでは睡眠中も交感神経の緊張が続いていることが分かりました。そのため「寝つきが悪い」「途中で目が覚める」といった症状が起こると考えられています。

治療の基本は薬物療法

慢性疲労性症候群の治療の基本は「漢方薬、ビタミンB12、C」などの服用です。

▼漢方薬―主に「補中益気湯」が用いられます。免疫の働きを高めることを目的に使用します。

▼ビタミン剤―慢性疲労性症候群では細胞に障害を与える活性酸素も大きく作用していると考えられています。そこで、活性酸素によって細胞が障害されないように抗酸化作用をもつビタミンCを大量に服用します。ビタミンB12は睡眠障害の改善に有効とされ脱力感や疲労感、思考力低下などの改善にも効果があることが認められています。

▼SSRI―漢方薬やビタミン剤で改善しない場合に用いることがあります。脳の神経伝達物質のセロトニンの代謝が改善され、脳の働きが良くなります。

認知行動療法

同じようなストレスが加わっても人によって感じ方が異なります。慢性疲労性症候群の患者さんの性格やストレスの感じ方などを調べたところ患者さんには「完璧主義」の人が多く、ストレスの影響が受けやすいことが分かりました。そこで「認知行動療法」が行なわれることがあります。これは感じ方や行動の癖などを見直し、上手にストレスに対処する方法を見出していくものです。

慢性疲労性症候群のはり灸治療

慢性疲労性症候群およびその関連疾患は、東洋医学の古典で言う「虚労病」や「少陽病」「少陰病」に相当する部分が少なくありません。

虚労とは元気が不足して心身ともに疲労している状態です。

少陽病とは病期が慢性化し、発熱と解熱を繰り返し胸脇苦満など兆候が見られ、リンパ球などの免疫系の活動が活発にされている状態のことです。

また少陰病というのは、抗病反応が低下し、沈滞して、ジッと横になっていたい様をいっています。

具体的には不足している元気を補うために百会(ひゃくえ)、膻中(だんちゅう)、中脘(ちゅうかん)、三陰交(さんいんこう)などを用います。

また、少陽病に対しては期門(きもん)、日月(じつげつ)、中封(ちゅうほう)、行間(ぎょうかん)を、少陰病に対しては関元(かんげん)、照海(しょうかい)、肓兪(こうゆ)京門(けいもん)などに鍼、灸を行います。上記の経穴以外にもその日の体調によって経穴の変更を行ない、不足している元気を補い心身共に治療していきます。

慢性疲労性症候群を短期間で完治させることは難しく、一般に治療は数ヶ月から数年かかります。徐々に症状の改善を図っていくことが大切です。

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