パーキンソン病南大阪鍼灸所

 category : 神経系 

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、脳内の「ドパミン」という神経伝達物質が減ってしまい、情報の伝達がうまくいかなくなり、運動障害が起こる病気です。多くは50歳代後半から70歳代で発症して、徐々に進行していきます。

パーキンソン病の原因はいまだに十分に解明されていません。今のところ、中脳の「黒質」と呼ばれる部位の神経細胞が減り、ここで作られているドパミンが減少するために発症することがわかっています。黒質でつくられたドパミンは、大脳にある「線条体」に送られます。線条体は運動機能に関する情報伝達を担っているところで、黒質から送られるドパミンが減少すると線条体の神経細胞の働きが低下して、運動にかかわる情報伝達がうまくいかなくなります。その結果としてさまざまな運動障害が起こってくるのです。

健康な人でも20歳ごろをピークにドパミンの量は減っていきますが、パーキンソン病の患者さんは、健康な人よりもドパミンの減り方が早く、90%程度まで減ってしまうと症状が現れるといわれています。

パーキンソン病の症状

パーキンソン病には特徴的な症状として、「パーキンソン症状」という四大症状があります。

●振戦(手足が震える)

安静時に手や足に「震え」が起こりますが、何かを持ったり、手足を動かしたりすると症状は治まります。震えは1秒間に4~6回程度のリズムで起こるのが特徴です。

●筋固縮(筋肉が固くなる)

筋肉の緊張が高まり、他の人が患者さんの関節を動かすと、動かした人に抵抗が感じられます。

●動作緩慢(動きが遅くなる)

動きが少なくなったり、1つ1つの動作がゆっくりになったりします。

●姿勢反射障害

体が傾いたときに姿勢をうまく立て直せず、転びやすくなります。他の症状のように初期から現れることは少なく、病気がある程度進行してから起こります。

このほか、歩き始めの一歩がなかなか踏み出せない「すくみ足」や「すり足」、「小刻み歩行」などの症状が現れることがあります。

パーキンソン病の進み方

症状の程度の目安は、5段階の「ヤール重症度」で示されます。

1度…片方の手足に症状が現れる。

2度…両方の手足に症状が現れる。

3度…前屈姿勢、小刻み歩行がみられる。日常生活がやや制限される。

4度…両方の手足に強い症状がある。日常生活でかなりの介助を必要とする。

5度…ベッドや車イスを使っての生活になる。全面的な介助を必要とする。

検査と診断

問診のあと、以下のような検査が行われます。

・神経学的診察

歩行の状態を診たり、筋固縮の有無などを調べたりします。

・脳のMRI(磁気共鳴画像検査)

パーキンソン病とよく似た症状が起こることがある「脳梗塞」などの病気との鑑別のために行います。

・MIGB心筋シンチグラム

MIGB(メタヨードベンジルグアニジン)という薬を静脈に注射して、心臓の筋肉に取り込ませて心臓の状態を画像化します。この薬はパーキンソン病があると短時間で心臓の筋肉から排出されるため、診断のために有用な検査です。

パーキンソン病の治療法

パーキンソン病は原因がはっきりと分かっていないため、治療は症状の改善を目的に行います。基本は「薬物療法」で、「ドパミンアゴニスト」や「L-ドーパ製剤」など、ドパミンの不足を補う薬が中心になります。早期にはドパミンアゴニストで治療を始めて、症状の改善が不十分ならばL-ドーパ製剤を併用します。また、患者さんの年齢や合併している病気などに応じて使い方を調整します。その他、さまざまな症状を軽減するために、補助的に他の薬を併用する場合もあります。

薬以外の治療法では、脳の深部に電極を埋め込んで刺激を加える「深部脳刺激療法」などが行われることもあります。また、症状に応じて、歩行練習のリハビリテーションを行ったり、うつや不安が強い場合には「カウンセリング」や「精神療法」を行ったりすることもあります。

鍼灸治療の目的

まず、パーキンソン病の患者さんを鍼灸で治療する際の目的は、「患者さんの生活の質(QOL)を上げる」ということです。パーキンソン病は徐々に進行していき、しだいに介護を必要とすることになります。そのため鍼灸治療によって、病気の進行を少しでも遅らせ、また、症状が悪化してきても、少しでも生活の質が落ちないようにするのが狙いです。患者さんのなかには「鍼や灸をして、治すことができないか?」と尋ねて来られる方もおられます。残念ですが、10年、20年という長期的な視点で見ると、まず間違いなく病気は進行していくでしょう。鍼灸治療を開始する前には、必ずこのことを伝えて、それでも10年、20年後に少しでも今の生活の質(QOL)を維持できるように治療をするという説明をして、理解してもらうようにしています。

また当然ですが、パーキンソン病の治療は病院での薬物療法と合わせて鍼灸治療を行います。「鍼灸治療をするから薬は飲まない」といって、服薬をやめてしまうと症状が一気に悪くなることがあります。そして、一度悪くなると今までの状態に戻ることは難しくなります。あくまでも薬物療法と鍼灸治療をプラスして、相乗効果を出せるように治療していきます。

生活の質(QOL)を上げる

鍼灸治療の目的は生活の質(QOL)を上げることです。では、どのようにするのかというと、基本はやはり症状を改善するための治療を行っていきます。

まずはパーキンソン病に多いふるえについて書いていきましょう。ふるえに対して鍼灸治療は効くのかというと、答えは「イエスであり、ノーでもある」ということになります。これは鍼灸治療をした後にふるえがマシになることはあるのですが、やはり長期的にみると症状は進んでいきます。しかしそれは、治療する意味がないというわけではありません。一時的とはいえふるえが止まることは患者さんにとって大きなプラスになります。また、治療面でもふるえがマシになれば続けてみようと考えてもらい、継続して治療していくキッカケになります。

ふるえに対する治療法にはいろいろ種類があります。例えば、ふるえが強い筋肉に対して、皮内鍼を付けることがあります。皮内鍼とは長さが1~2mmほどの小さな鍼で、皮膚に対して水平に鍼を入れ、テープで固定する方法です。短い鍼が水平に入っているため、皮内鍼を付けたまま動いても痛みなどはありません。またきっちりとテープで固定しているので体の中に入っていくようなこともなく、非常に安全な治療法といえます。これは、ついた状態で1週間ほどおいていても大丈夫なので、その間治療効果が持続しやすいという面もあります。

ほかには、低周波機器で通電することもあります。ふるえの強い筋肉に対し、鍼を刺入し、ふるえのリズムと合わせた通電をすると、ふるえがマシになることがあります。また、頭部に鍼をするとふるえに効くことがあります。頭部を押さえたときに特にこたえるところに鍼をするとよく効きます。

筋固縮など体の動きが悪くなることに対しても、上記の治療法は有効です。それ以外では、鍼を刺しその状態で鍼の先にもぐさをつけて温める灸頭鍼という方法を使用することもあります。

パーキンソン病の初期には、症状は片方の手足どちらかに現れるのが一般的です。しかし、この場合でも鍼や灸は左右両方にやった方が、効果は上がると思います。

便秘を解消する

パーキンソン病の患者さんには、便秘になる人が多いです。なんと90%もの方が便秘になってしまいます。この便秘ですが、これも生活の質(QOL)を大きく下げてしまう要因の一つですので治療していきます。健康な人なら「便秘くらい薬を飲めばすぐ出るだろう」と考えるでしょうが、パーキンソン病の患者さんではそうはいきません。なぜかというと、薬で出そうとすると出すぎてしまうのです。便が出なくても、出すぎても体は体力を消耗するので、適度に出るように調整する必要があります。この調整は薬ではなかなか難しいのですが、鍼灸治療ではマイルドに効果が出るため、出すぎるようになることはあまりありません。ツボは「関元(かんげん:臍の下1.5cm)」や「神門(しんもん:手首のしわの小指側、手の平と甲の境目)」などがいいでしょう。鍼もいいですがせんねん灸などを自宅で毎日続けると効果が安定して出るのでおすすめです。

夜間頻尿に対して

また、パーキンソン病の患者さんには蓄尿障害のある人が多くおられます。この蓄尿障害があると尿が何度も出る頻尿という症状が現れます。これが夜間にあることを夜間頻尿と呼びます。こうなると夜中に何度もトイレに行くことになり、その分睡眠が途切れてしまいます。この状態が続くと睡眠不足により体力が低下し、パーキンソン病自体にも影響を与えるため治療をしていきます。先ほども出た「関元」は頻尿にもよく効きます。鍼を刺して膀胱の方にも響くような刺激を与えると、頻尿が改善されることがあります。ほかには「照海(しょうかい:内くるぶしの下)」も効果があります。ここもせんねん灸を続けるといいでしょう。

その他の症状

そのほかにも患者さんにはさまざまな症状が現れます。肩こり腰痛風邪などの日常的な症状で体を動かしづらくなって活動量が低下してしまい、生活の質(QOL)が下がることがあるので、これらの症状も治療していきます。その時にある患者さんの症状をきちんと聞きながら、治療していくことが大切です。また、薬の副作用で現れる症状(吐き気、嘔吐、食欲低下など)も治療することで薬の効果を高め、長期間の使用ができるようにしていきます。

このように鍼灸治療では患者さんの生活の質を上げるために治療していきます。しかし、多くの患者さんは治療を継続していくなかで、病気が進行し介護が必要となってきます。ですが、患者さんが歩いて鍼灸院に来られなくなっても往診などで治療は続けることが大切です。これは患者さんのためにもなりますし、また患者さんが少しでも体を動かしやすくなることで、介護している家族の人にとってもプラスになります。このように、鍼灸は単に病気を治療するだけでなく、患者さんの生活や、周囲の関係にも目を向けていくことで患者さんを支えていきます。

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