上腕骨外側上顆炎南大阪鍼灸所
長引きやすい肘の痛み
「物をつかむ」「ドアノブを回す」「ぞうきんを絞る」といった動作で肘が痛いと感じた経験はありませんか?
心あたりのある方は「上腕骨外側上顆炎」かもしれません。
「上腕骨外側上顆炎」とは聞きなれない病名ですが、一般に「テニス肘」「ゴルフ肘」と呼ばれる肘の痛みもこの病名に含まれます。
「テニス肘」「ゴルフ肘」と聞くと、スポーツ障害というイメージがありますが上腕骨外側上顆炎は、スポーツと関係が無いことが多く、特にスポーツをしない主婦や中年男性にとっても身近な病気なのです。
上腕骨外側上顆炎は肘の外側が痛む病気です。
痛みがあっても関節が変形することはありません。また、肘の動きが悪くなることもありません。
上腕骨外側上顆炎は順調に回復することもありますが、どちらかというと長引くことが多く、半年~1年間も痛み続くこともよくあります。まれに数年間医療機関を通い続ける患者もいます。”痛みが消えて治ったと思ったら再発した”ということもあります。
上腕骨外側上顆炎は、痛みが長引きやすく治りにくい病気といえます。
上腕骨外側上顆炎の特徴
・筋肉の付着部が障害される
肘の関節の外側(上腕骨の外側上顆)には「手首を反らす筋肉(短とう側手根伸筋)」が付いています。短とう側手根伸筋は「長くて強く、骨との付着部が狭い」筋肉です。筋肉は付着部が広ければ全体に力が分散されますが、この短とう側手根伸筋は、付着部が狭いために、力がその部分に集中して過度な負担がかかります。そのために炎症などをおこしやすくなっています。
ただし現在のところ、関節内部で何が起こっているのかがすべて解明されているわけではありません。例えば、関節を包む膜など筋肉の付着部周辺に異常が起こっている場合もあると考えられています。
・きっかけがはっきりしないこともある
「重い荷物を持ったり、運んだりした」「スポーツを習い始めた」など明らかなきっかけがあって発症することもあれば、これまで通りの生活をしていて、特に思いあたるきっかけがないのに発症することもあります。そういったケースでは日々の家事などで手を使ううちに徐々に肘に負担がかかり、発症すると考えられています。
・ちょっとした動作で痛む
痛みは肘の外側の手首を反らす筋肉が付着している部位に起こります。「物をつかむ」「ドアノブを回す」「ぞうきんを絞る」「ビールをつぐ」などといった動作で手を動かしたときに痛みます。ほとんどの場合、手を動かさなければ、痛むことはありません。
痛みの程度は、手を動かすことができないほどつらい場合もありますが、我慢すれば家事やスポーツができる程度の場合もよくあります。
物を持ったり、握ったりする動作には「指や手首を曲げる」というイメージがあり、手首を反らす筋肉は働いていないように思えるかもしれません。
しかし、握力計で握力を測るときに、手首を手のひら側に曲げても数値は上がりません。
手首を反らしたほうが高い数値が得られます。重い荷物を持ち運ぶなど強い握力が必要なときには自然に手首が反った状態になり、筋肉の付着部に負担がかかってしまいます。
また、小さな物をつかんだり、ドアノブを回すなどの強い力が必要ないように思える動作でも手首が垂れないようにするために、手首を反らす筋肉が働いています。日常生活では、このように手首を保持して行う動作が多くあります。
上腕骨外側上顆炎を発症すると生活の多くの場面で痛みを感じるようになります。
・利き腕に起こりやすい
負担がかかりやすい腕の肘に起こることが圧倒的に多いと言えます。テニスの場合は若いころから続けている人は少なく、30才以降に始めた人に起こりやすいといわれています。ゴルフの場合は、利き腕と反対側の肘に起こることが多いです。
・30~50才代に多い
この年代の人は筋肉にしなやかさが失われていく一方で、筋力はある程度維持されているため、つい無理をしてしまいやすいです。そのため、筋肉の付着部にかかる負担が大きくなりやすいといえます。また生活のなかで手を使う機会が多いことが関係していると考えられます。筋肉が未発達で柔らかい子どもや、筋力が低下し重い荷物を持つなどの機会が少ない高齢者には起こりにくいといえます。
診断方法
上腕骨外側上顆炎が疑われる場合は次のような検査が行われます。
・エックス線検査
骨の変形などの異常が無いかを調べます。上腕骨外側上顆炎そのものの炎症などはエックス線画像には現れません。
・疼痛誘発試験
指で肘を押し、痛みが起こる部位を調べます。そのほか抵抗下手関節伸展テスト(トムセンテスト)や「抵抗下中指伸展テスト」が行われます。
エックス線検査で、ほかの肘の病気がないことが確認され、疼痛誘発試験で痛みやその部位が確認された場合に上腕骨外側上顆炎と診断されます。
治療法
・上腕骨外側上顆炎の主な治療には、次のようなものがあります。
安静…痛みが起こる家事やスポーツなどの動作を極力行わないようにし、肘を休ませます。
消炎鎮痛薬…内服薬、湿布薬、軟膏などが用いられます。
ステロイド薬の局所注射…筋肉の付着部に注射をし、炎症を抑えます。
装具…手の動きを制限する装具を手首に着けます。手首を反らす筋肉に力が入らなくなり、痛みが抑えられます。装具は義肢装具士によって患者の手首の形に合わせて作製されます。
テニスバンド…スポーツや家事などを行う際に使います。幅の狭いバンドを、肘の関節から少し手前寄りの、前腕のもっとも太いところに締め、痛みの軽減を図ります。
ストレッチング…手首を反らす筋肉を伸ばします。収縮して固くなった筋肉が柔らかくしなやかになり、筋肉の付着部の負担が軽減されます。
鍼灸治療の効果
上腕骨外側上顆炎を発症しやすい方は、筋肉の柔軟性が失われてきています。
鍼灸治療では、筋肉の柔軟性が失う原因の一つに「水毒」があると考えています。
「水毒」とは体内に必要以上の水分が取り込まれている状態です。「水毒」のあるひとは筋肉も水ぶくれになり柔軟性が失われています。そして「水毒」の人は胃腸もむくんで胃腸が弱っています。
「水毒」をみつける簡単な方法は舌を診ることです。舌をベーと出すと舌の周りがギョウザのようにギザギザがついている舌は「水毒」タイプの人です。
鍼灸治療では、上腕骨外側上顆炎の原因である短とう側手根伸筋の反応点に鍼・灸をするのはもちろんのことその他前腕部の筋も治療します。
また、「水毒」を改善させるために水分穴(おヘソの指1本分上)関元穴(おヘソの指3本分下)を使います。
そして弱っている胃腸の調子を整えるために中脘穴(みぞおちとおヘソの間)足三里(膝の下)にも鍼灸治療を行います。
テニス肘の症例
40才.男性.会社員.Oさん
Oさんは4,5年前からテニスをはじめ現在週2回のテニスを趣味で楽しんでいます。
しかし約半年前からテニス中に右手の肘が痛くなり、また、2ヶ月まえからは左手の肘も痛くなりました。そこで近くの整形外科を受診され検査などの結果、上腕骨外側上顆炎と診断されました。整形外科の医師より安静のためにテニスを休むよう指示され、消炎鎮痛薬を処方されました。Oさんは痛みのきついうちは医師の指示を守り、テニスをひかえていましたが、痛みが落ちついてテニスを再開すると、以前の痛みよりきつくなり、南大阪鍼灸所に来院されました。Oさんを治療する際に、問診でどのような経過で発症したのかを詳しくたずねました。
次に南大阪鍼灸所においても疼痛誘発試験である「抵抗下手関節伸展テスト」と「抵抗下中指伸展テスト」を行いました。結果はどちらも陽性でした。
そして脈診、腹診を行います。そして舌診を行いました。するとOさんの舌の左右にはギョウザのようにギザギザができていました。
そこでOさんに現在の身体の調子を説明し、治療を開始しました。
治療は水毒の改善と胃腸を強くするために中脘、関元に鍼灸を行い、痛んでいる局所には、短とう側手根伸筋の反応点をさがし、鍼灸治療を行いました。
一週間後来院された時は舌の状態は以前よりギザギザが薄くなり、食欲も出てきたそうです。
この日も同様の治療を行いました。
そして、一週間おきに2回来院され、痛みも消失されていたので略治となりました。
Oさんのように多くの方が「水毒」になっています。
南大阪鍼灸所では単に痛いところだけに鍼灸治療をするのではなく、水毒を改善するために全身の治療を行います。