変形性股関節症南大阪鍼灸所
立ち上がりや歩き始めに股関節が痛む
立ち上がるときに股関節が痛い場合は「変形性股関節症」の可能性があります。
股関節ではなくお尻、太ももなどに痛みや違和感、だるさを感じることがあります。これは、股関節が体の深い部分に位置するために痛みの情報を発信している神経が正確に認識していないことが原因です。
お尻の痛みや脚の痛みを訴えて鍼灸治療に来られる患者さんの中にも実は変形性股関節症の方が多くおられます。
股関節の構造
股関節は大腿骨と骨盤をつなぐ関節です。大腿骨上部の先端の大腿骨頭は球状で骨盤の関節部は臼のようなくぼみになっています。「臼蓋」と呼ばれるくぼみに大腿骨頭が包み込まれる構造になっています。
大腿骨頭と臼蓋の先端は弾力性のある関節軟骨で覆われているため骨同士が直接ぶつかることがなく円滑に動くようになっています。関節軟骨は衝撃を吸収するクッションの役割を果たしています。
「変形性股関節症」は関節軟骨がすり減って痛みなどが現れる病気です。女性に起こり易く患者さんの約9割は女性です。
変形性股関節症の進行
変形性股関節症は進行の程度によって4段階に分けることができます。
●前関節症―関節軟骨の状態はほぼ正常で痛みはほとんどありません。ただ臼蓋の発達が少し悪いという構造上の異常があります。
●初期―関節軟骨がややすり減っている段階で立ち上がるときや歩き始めるときに痛みや違和感が出るようになります。ただしこれらはすぐに治ります。
●進行期―関節軟骨がさらにすり減って関節の隙間が狭くなり骨にとげ状の変形(骨棘)ができたりします。歩く時の痛みが強くなり関節の動きも悪くなります。
●末期―関節軟骨が消失して、骨と骨がぶつかり変形も進みます。そのため脚がまっすぐ伸ばせなくなったりして、動きに制限が生じ日常生活に支障を来たします。進行するほど痛みは強くなり安静にしていても痛むようになります。
変形性股関節症の原因
変形性股関節症の原因は大きく次の3つに分けられます。
●加齢・肥満―関節軟骨は加齢に伴って徐々にすり減っていきます。また、肥満は関節軟骨に加わる負担を大きくすることで、病気を進行させる原因にも痛みを引き起こす原因にもなります。
●外傷―臼蓋や大腿骨の骨折が原因となることがあります。
●骨の形成異常―臼蓋の発達が不十分な「臼蓋形成不全」があるために股関節のかみ合わせが浅くなっていることがあります。特に女性に多いです。日本人に起こる変形性股関節症のほとんどが臼蓋形成不全によるものとされています。
変形性股関節症の治療
変形性股関節症と診断された場合は、まず「運動療法」と「生活習慣の改善」を行います。変形性股関節症の進行を防ぐためにも痛みを軽減するためにもこの両方が非常に重要になります。
●運動療法―股関節を外側に開く際に使われる「外転筋群」や股関節周辺の様々な筋肉を強化します。こうすることで股関節が安定するため関節軟骨が摩擦するのを防ぐことができます。しかし、運動は毎日継続することはよいことですが、やりすぎるとかえって股関節に負担をかけてしまいます。状態に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
●生活習慣の改善―和式の生活ではどうしても股関節に負担がかかりやすくなります。ベッド、イスとテーブル、洋式トイレなどを取り入れた洋式の生活を心がけるようにします。また肥満のある人は体重を減らすことが股関節の負担を軽減することにつながります。
●装具療法―激しい運動は避け普段から装具を活用することが重要です。シリコン製の中敷きやクッション性の高い靴を使って出歩く時のかかとの衝撃を和らげ、股関節に衝撃が伝わらないようにします。
また、変形性股関節症のある人の多くは股関節のかみ合わせが浅いため病気が進行して大腿骨の位置がずれることによって脚の長さに左右差が出てくることがあります。そのような場合には病気がある側の脚だけに底の厚い靴を使用することによって左右差をなくすようにします。
その他股関節の周囲を温めて血行を改善する「温熱療法」が行われることがあります。これらを行っても痛みが続くようであれば消炎鎮痛薬を使って「薬物療法」を行います。薬物療法でも改善せず日常生活に支障を来たす場合は手術療法が行なわれることがあります。
変形性股関節症の鍼灸治療
変形してしまった骨を元に戻すことは鍼灸治療にはできません。しかし、鍼灸治療を行うことによって変形性股関節症からくる痛みをコントロールし、QOL(生活の質)を向上させることは十分可能です。
変形性股関節症の鍼灸治療は患部の消炎、血行循環の改善を目的として大転子付近のツボ環跳(かんちょう)、居髎(きょりょう)、股関節前面のツボ衝門(しょうもん)、髀関(ひかん)に灸頭鍼(きゅうとうしん:刺した鍼のうえに丸めたもぐさをのせ温める鍼灸術)を行います。
股関節の外転を行う筋肉の中殿筋、小殿筋の硬結に対して、鍼灸および灸頭鍼を行います。
また、患部以外の反対側の腰殿部にも治療を行ないます。これは、普段から症状のある側に負担を掛けないように反対側に無理をかけているためです。
このように鍼灸治療を行うことによって患部痛みをコントロールし悪化を防ぎます。変形性股関節症には灸頭鍼を用いることによって、股関節の周囲を温めて血行を改善する「温熱療法」の効果も得ることができます。