バセドウ病南大阪鍼灸所

 category : 代謝内分泌 

バセドウ病は甲状腺機能亢進症の一つ

甲状腺に何らかの異常がみられる人は約760万人いると推定されています。甲状腺疾患は決して稀な病気ではないのです。実際鍼灸治療を受診される方にもおられます。

バセドウ病は20代から40代の女性に多い病気です

ダイエットをしていないのに体重が急激に減る。同時に動悸がする。手が震える、眼球が突き出てきたなどの症状がある場合はバセドウ病の可能性があります。
甲状腺はのどぼとけの下にあり、甲状腺ホルモンを血液中に分泌する器官です。甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝を促進して、脳や心臓、肝臓などの活動を高めたり、血流や発汗の量、体温を調整するなど重要な役割をしています。

甲状腺ホルモンは脳の下垂体から分泌される「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」が甲状腺を刺激してつくられます。健康なときには、甲状腺ホルモンの血中濃度を一手にに保つ調節機能が正常に働きますが、何らかの原因で甲状腺ホルモンの分泌が過剰になることがあります。こうした状態を「甲状腺機能亢進症」といいます。バセドウ病がその代表的な病気の一つです。20代から40代にかけて発見されることが多く女性に多い病気です。

なぜ甲状腺の機能が亢進するのか

原因は細菌やウイルスなどから体を守る免疫システムのトラブルと考えられています。免疫は細菌などが体に侵入した異物(抗原)に対して「抗体」を作り体を守ります。バセドウ病の患者さんでは本来異物ではない体内の物質を異物と勘違いして抗体を作ってしまいます。その抗体が甲状腺ホルモンの過不足とは無関係に甲状腺ホルモンをつくれと働きかけるために甲状腺ホルモンが増えすぎてしまいます。

通常は自分の体内物質に対して抗体をつくるのを監視しているはずの免疫システムがストレスなどによってトラブルが生じるからではと考えられています。

バセドウ病のサイン

バセドウ病では甲状腺が過度に刺激されているため、首の全面が膨らみます。また自覚症状には「暑さに弱くなる」「動機や息切れがする」「手が震える」「体重が減る」など様々なものがあります。これらの自覚症状はほかの病気で起こることもありますが、バセドウ病が起こっている可能性も考慮して病気を見逃さないようにしましょう。

バセドウ病は「症状」と「血液検査」の2つから診断します

バセドウ病の三大症状

①脈拍増加、やせ、発汗など・・・たとえば通常の脈拍は一分間に70~80回程度ですが、バセドウ病患者さんでは100回を超えます。また食欲があるのに急に痩せる。涼しい気候なのに汗がよく出る。手の震えや倦怠感、疲労感がある。便秘気味だった人が突然便通が良くなるなど、これらはいずれも甲状腺ホルモンが多すぎるために基礎代謝率が急激に高まったために起こる症状です。

②のどの腫れ・・・程度はさまざまですが、のど全体が腫れてきます。バセドウ病では腫れた部分は柔らかく、橋本病の場合は腫れた部分は固くなります。

③眼球が突き出る・・・目の奥でも免疫システムの異常が起こり、目の組織が腫れます。目の奥の後ろの組織は骨のため、筋肉が腫れた分だけ眼球が前に押され眼球が突き出ます。筋肉の周りや上まぶたの後ろにある脂肪も前に押し出されて、腫れぼったくなることもあります。

血液検査でみられる所見

①甲状腺ホルモン(FT4)の値が高い

②甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値が低い

③甲状腺刺激抗体またはTSH受容体抗体が陽性ただし陰性の患者が約10%います

④放射性ヨードの摂取率が高い

バセドウ病の薬物療法

バセドウ病の治療方法には、薬物療法、アイソトープ療法、手術療法の3つがあります。まず薬物療法がおこなわれます。薬物療法は3年以上続く長期戦です。甲状腺ホルモンを抑える抗甲状腺薬を用います。

抗甲状腺薬にはいくつかの注意点があります。

①薬が効き始めるまでに1ヶ月ぐらいかかる・・・血中には健康時の3~4倍の甲状腺ホルモンが出ているのですぐには減りません。

②副作用に注意・・・1~5%の確率で皮膚症状が見られます。また特に注意する副作用として「無顆粒球症」があります。これは発症頻度は0.5%以下ですが顆粒球という白血球が減少し、悪寒や震えを伴う発熱(38℃以上)、のどの痛みといった症状が現れます。体の抵抗力の低下によって引き起こされる副作用です。このような症状が出た場合はすぐに入院する必要があります。

③その他の注意すべき症状

脱毛・・・抜けるのは甲状腺ホルモンが過剰なときに生えた毛根の弱い毛で、細く長いのが特徴です。数ヶ月すれば改善します。

こむら返り・・・薬の効果で甲状腺ホルモンの血中濃度が急激に下がると筋肉がつることがあります。

体重増加・・・バセドウ病になると急激に痩せてきますが、治療効果が現れ基礎代謝率が低下すると消費エネルギーが減るため治療開始以前と同じ食生活を続けていると確実に太ります。したがってダイエットに心がける必要があります。

日常生活での注意点

甲状腺ホルモンの材料になるのはヨードです。最も多くヨードを含んでいる食品は昆布です。昆布を食べたり昆布で取ったダシを大量に飲むことは控えてください。しかし海苔やワカメにはそれほどヨードは含まれていませんので、心配ありません。

アルコールに対して弱くなる傾向があります。たくさん飲まないほうがいいでしょう。

喫煙者と非喫煙者の治療効果を比較したところ喫煙者より非喫煙者の方が2倍以上の人が寛解(症状が治まること)しているというデータもあります。禁煙に心がけましょう。

薬物療法が無効の人にアイソトープ療法

アイソトープ療法とは、甲状腺だけがヨードを取りこみホルモンをつくるという体の特性を利用した治療法です。放射性ヨードが入ったカプセルを飲みます。効果が出るまで2~6ヶ月かかります。

この治療法のメリットは抗甲状腺薬を飲み続ける必要がないので精神的・肉体的負担が少ない点です。その半面、甲状腺がかなり小さくなるので治療後に甲状腺機能が低下することがあります。その場合甲状腺ホルモンを飲み続けなければならないこともあります。ただし、甲状腺ホルモンを飲んでいる間は、抗甲状腺薬による治療のときほど頻繁に検査を受ける必要はありません。

また放射線による発がんの心配ですが、健康に問題のないレベルの放射線量です。しかし半年から一年間は妊娠は避けるべきです。

手術療法

手術の対象となる方は、薬物療法が副作用などでうまくいかなかった人。忙しくて通院がままならない人。妊娠出産を希望している人。あるいはアイソトープ療法を行うには甲状腺腫が大きい人です。

バセドウ病の鍼灸治療

バセドウ病はストレスを契機に発症したり、増悪したりすることが多いです。鍼灸治療ではストレスを少しでも和らげる治療をしていきます。具体的にはイライラ、不安、抑うつ、不眠などの精神症状に対して期門(きもん・お腹の前面で季肋部)・行間(ぎょうかん・足の甲で第1趾と第2趾との間)・百会(ひゃくえ・頭のてっぺん)などを用います。また動悸に対しては膻中(だんちゅう・胸部で両乳頭の真ん中)・照海(しょうかい・内くるぶしの真下)を、休んでも取れない疲れには中脘(ちゅうかん・お腹の前面でみぞおちとおへその真ん中)・足三里(あしさんり・膝のお皿の下で外側)などにはり灸を行います。

バセドウ病に対する鍼灸治療はあくまで補充的な治療ですがバセドウ病による症状改善には大変有効です。しかし、鍼灸治療単独で行うのではなく西洋医学と併用していくことが重要です。

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