突発性難聴南大阪鍼灸所
突然耳が聞こえなくなる病気
突発性難聴とは、ある日突然、何の前ぶれもなく耳が聞こえにくくなる病気です。
その名のとおり、いつから難聴になったかを特定できるのが、この病気の最大の特徴です。
難聴に気づくのは電話で話していたとき、テレビを見ていたとき、人の話し声が聞こえにくい、また、高い音が聞こえにくいなどさまざまです。
そして、多くの場合が、左右一方の耳だけに難聴が起こります。
難聴の程度は軽くなったり、重くなったりといった経過をたどることはありません。ただし聞こえにくいと気づいてから数日間のうちに難聴の程度が悪化することはあります。
めまいは1/3程度の患者さんに見られ突発性難聴発症後1週間以内に治まることが多いです。その時、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
耳が痛むことはあまりありません。
音が聞こえる仕組みについて
耳から入った音(空気振動)は外耳道を通って鼓膜を振るわせます。そして中耳の耳小骨に伝わって振動が増幅され、内耳の蝸牛という渦巻き状の気管に伝えられます。
蝸牛は空気の振動をキャッチするセンサーで、振動するエネルギーを電気信号に変換します。
この電気信号は、聴神経を通って大脳へと伝えられ、大脳で「音」として認識されます。
音を振動として伝える外耳・中耳を「伝音器」といいます。音を電気信号に変える内耳や電気信号を脳に伝える聴神経は「感音器」と呼ばれています。
突発性難聴は感音器が障害されて発症する「感音性難聴」の一種です。
突発性難聴が発症する原因
突発性難聴が起こる原因は明らかではありませんが、「内耳の血液循環障害説」「ウィルス感染説」の2つの説が有力とされています。この2つの説の単独の原因か2つの説が絡んでいると考えられています。
「内耳の血液循環障害説」について
音の空気振動を電気信号に変えるセンサーの働きをする内耳にエネルギーを供給しているのが「血管条」です。血管条は、蝸牛内部にあり、細やかな血管が集まった部分で、電気機器のバッテリーのような役割を果たしています。
突発性難聴になると何らかの要因で血管条の血流が悪くなってしまうためにエネルギーの供給がされなくなり、内耳の機能が低下します。
「ウイルス感染説」について
2つ目のウィルス感染説は過労や強いストレスにより免疫力が低下したときにウィルスに感染し、聴神経や内耳の感覚細胞の一部に炎症を引き起こすという説です。
通常は音の刺激(空気振動)が入っていき、それによって感覚細胞が刺激され、聴神経が電気的な興奮を起こしますが、血流障害やウィルスによって感覚細胞が障害されると、音の刺激がないのに聴神経が興奮してしまうことがあります。
それが耳鳴りとなります。
また、めまいについては体のバランスを保つセンサー(三半規管)が聴覚をつかさどるセンサー(蝸牛)の隣に位置するために影響を受けやすいのではないかと考えられています。
検査と診断
問診・視診・血液検査
問診でたずねられる内容は難聴の起こり方(難聴に気がついた時期など)、難聴の程度、難聴になった経験の有無、耳鳴りやめまい、耳の詰まった感じの有無などです。
また発症前1~2週間の暮らしぶりも大切なポイントです。
過労や強いストレスを受ける出来事はなかったか、風邪をひいたり、発熱はしなかったか、頭をぶつけたり、大音響に耳がさらされたりしなかったのかを問診します。
時には、治療中の病気に使っている薬の副作用で難聴がおきる場合もありますので治療中の病気についてもおたずねをします。
視診で鼓膜の状態を診たり血液検査も加わると「外傷」「薬物」「感染」による突発性難聴であるかどうか分かります。
これは他の突発性難聴と区別するためのものです。
突発性難聴の診断基準
厚生労働省が作成した診断基準では次の3点を満たす場合が突発性難聴であるといわれています。
- ①突然の難聴‐発症したときがはっきりしていること
- ②高度な感音難聴‐難聴であることを自覚できるほど、強い感音難聴
- ③原因が不明または不確実‐検査をして原因が見つからない場合、他の疾病による突発性難聴と区別する
治療法
安静と薬物療法の2つが、突発性難聴の治療の大きな柱となります。
発症後、3週間までの治療が後の経過を決めます。
安静‐過労やストレスが発症の引き金の場合には、安静が第一です。
入浴は長時間入ると意外に体力を使います。また内臓の血流を悪くすることもありますので少なくとも薬物療法を行っている間は、シャワー程度の入浴が望ましいです。長風呂は避けた方が良いでしょう。
薬物療法
血流を良くする薬とウィルスによる炎症を改善する薬など、可能性のある原因を考えて複数の薬を使って治療することが多いです。
血液循環改善薬・抗凝固薬…いずれも内耳の血流をよくします。
代謝賦活薬‐ビタミン剤(B1、B12)…いずれも蝸牛の感覚細胞や聴覚神経を回復させたり働きを活発にします。
ステロイド薬…ウィルスによる内耳の炎症を改善するだけでなく、血管のむくみや血流を改善する作用もあります。
利尿薬…蝸牛内のリンパ液が過剰になっている場合に用います。
突発性難聴は発症後2~3週間の安静と治療が必要です。
例えば最初の2週間で順調に回復すれば経過は良好ですが、反対にこの間の回復状況が不十分ならば、その後の回復もゆっくりです。
つまり、治療により回復させられる時期が限られているのです。
一ヶ月後になって暇になったからといって治療をしたいといっても無理な病気なのです。
鍼灸治療の効果
鍼灸治療も西洋医学の治療と同様に治療をはじめるタイミングがとても重要となります。
発症から数週間以内の治療開始が必要です。
回復されたほとんどのケースで発症後2週間以内の鍼灸治療の開始です。
その際、鍼灸治療単独で治療したのではなく、西洋医学と併用で鍼灸治療をすることで西洋医学と鍼灸が互いに相乗効果で回復されました。
鍼灸治療の目的は、第一に疲労回復に効果をあらわします。
鍼灸治療は「未病治ス」といわれますように予防より一歩進んでより健康になるために発展してきました。
より健康になるためには病気の前の段階である、疲れやこり、冷えなどがあらわれたときに鍼灸治療をし、病になるのを防いで自然治癒力が十分発揮できるような体づくりが大切です。
全身の疲労を回復させます。
鍼灸治療では突発性難聴を「肝腎の変調」と考えています。
「肝」とは、自律神経調節、筋肉トーヌス、血液循環(静脈系、微小循環)の調節、また免疫機能に影響があります。
「腎」とは成長、発育、生殖などの生命力および、体液の保持、骨格の形成に作用し、思考力にも影響があります。
具体的にはストレスで肝の変調が起こり、自律神経の調節がうまく働かずに免疫力が低下し、その影響を受けて、腎が変調(リンパ液の過剰やより早く老化現象が現れる)し、その結果、突発性難聴が発症すると考えています。
そして、耳に効果的なつぼを使用することにより、内耳の血流を改善させ、炎症をおさえます。
突発性難聴の症例
初診X年9月3日.55才.男性.太ぎみ.会社社長.Nさん
10日前に急に右耳が聞こえなくなり、近くの大学病院を受診、突発性難聴と診断される。
大学病院ではステロイド点滴で通院治療を行うが、持病の糖尿病のため、十分な治療(ステロイド点滴)が行えず、(これはステロイドが血糖値の上昇をまねくため)回復もかんばしくない。
現在の聴力はご本人の話によると少し聞こえるかなという程度。耳鳴りを伴う。
ストレスを多く受けている人のお腹は、みぞおちから左右特に右肋骨の下が張っています。肝の変調を表している腹症です。
Nさんも同様に肋骨の下が張ってました。
またおヘソの下には力がなく押さえると指がめりこむ状態です。これは腎の変調を表しています。
そこで、肝の変調を整えるツボ(右期門、肝兪)と腎の変調を整えるツボ(関元、照海、腎兪)に鍼を灸をしました。
さらに耳の血液循環の回復と炎症をおさえるためにツボ(耳門、翳風)に鍼と灸を加えました。
9月5日の2診時は、前回(9/3)の治療後から体調がすごく良くなったとNさんおっしゃいました。
9月4日に大学病院受診の際には耳鳴りが止まり、聴力も80%回復していたとのことでもこの日も同様の治療を行いました。
その後、9/7、9/10と治療を続け9月19日の5診時は右耳は9割5分回復し、略治となりました。
この症例では鍼灸治療開始時期がポイントとなります。
持病のために西洋医学の治療が十分行えずにそれまで回復が良くありませんでした。しかし鍼灸治療直後から体調も良くなり耳なりも止まり、聴力も回復してきました。
これは西洋医学と鍼灸治療の互いの治療が相乗効果の結果患者本人も満足できる改善を致しました。
このように鍼灸治療を行うときも鍼灸治療の時期、西洋医学の併用がとても重要です。